日本外務省の受託事業として当財団が毎年受入れている中国高校生訪日団の一行は5月25日から6月2日まで来日した。一行は王凡中国教育部国際合作交流局参事官を団長とする100名。北京、上海、陝西省、甘粛省、貴州省、江蘇省、青海省、吉林省、内蒙古自治区の9つの地域より選抜された高校生と引率教師である。滞在中に、東京で筑波大学附属高等学校を訪問、学校は訪日団のために当日午後の授業を40分に短縮して、部活動にも参加できる態勢の交流日程を組み、全校挙げての熱烈歓迎で一行を受け入れた。 また、静岡県では静岡高校をはじめとする6校の県立高等学校を訪問、訪問校の生徒宅に一泊のホームスティをして日本の学校生活と家庭生活を体験し、高校生同士の友情と理解を深めた。
筑波大学附属高校で全校挙げて歓迎 筑波大学附属高等学校では、海保校長以下、教職員、生徒が校門に一行を出迎え、筑波の生徒達が「ニイハオ」といえば訪日団の生徒たちは「こんにちは」と応えて、当初から友好ムード一色。800名の全校生徒が体育館に集合して歓迎集会が行われた。生徒を代表して平井敦史さんが「最近の中国の経済発展は素晴らしい。日中間の交流は長い歴史をもっている。21世紀はアジアの世紀であり、日中友好は大変重要。両国の友好を深めてゆくのは私たち高校生の役割である。短い時間ではあるが、今日の本校への訪問が相互理解の機会となれば幸いだ」と歓迎の挨拶を述べ、訪日団生徒を代表して吉林省実験高校の王泰然さんが「学校の門をくぐり、日本の高校生のみなさんの歓迎の熱気に感動した。中日の若者交流を深めることは大変意義のあること。みなさんの生活や学習について理解し、学び、よい友達になりたいと思っている。交流を通じて友人ができ、ともに両国間の未来のために努力していきたい。一人一人が友好の架け橋となりましょう」と応えた。
その後、全員が6時限目の授業を参観、参加したあと、部活動にも参加するなど全校 教職員、生徒全員が参加する交流が校舎、校庭に繰り広げられた。 学校での交流を終えた一行は筑波大学附属高等学校の代表40名と一緒に会場の東京プリンスホテルに向かい、当財団が主催する「歓迎の夕べ」に出席した。 「歓迎の夕べ」では当財団を代表して谷野作太郎副会長が歓迎の辞を 、また来賓を代表して文部科学省田村憲久大臣政務官が挨拶、ともに日本での体験をそのまま家族や友人に伝えてください、いい思い出をつくって両国の架け橋になってくださいと高校生を激励した。
王凡団長は訪日団を代表して「99年から5回にわたって実施されたこの事業は外務省、文部科学省、日中友好会館のご協力とご支援で有意義な成果を収めることができた。当面は前人の成果を受け継ぎ、新しい道を切り開くことが重要。両国高校生の交流は重要な事業であり、新しい世紀に両国が良好なパートナー関係を樹立するためにともに努力していきましょう」と語った。 第2部は両国高校生がそれぞれに歌や踊りで交歓、双方とも負けず劣らずの達者な芸を披露、最後は日本側の提案で、日本のヒット曲「花」(中国では「花心」として流行)を両国高校生が一緒に合唱して感動的なフィナーレとなった。
静岡県立高校6校でホームスティ 静岡県での高校生交流は県教育委員会のご協力と指導の下で実施された。27日新幹線で静岡入りした一行はまずホテルアソシア静岡ターミナルで静岡県企画部坂井信理事による「静岡と中国」というパワーポイントでのオリエンテーションに臨み、その後県教育委員会主催の「歓迎昼食会」に臨んだ。歓迎昼食会では鈴木善彦教育長が挨拶、「本県はアジアの架け橋プロジェクトを実施、59名の留学生の中に中国から18名を受け入れている。今回県立6校に分かれて体験学習とホームスティをしていただくが、特にホームスティは文化、生活面での相互理解が深められることと思う。世界は共生の時代。この時代にプログラムの果たす意義は大きく、日中両国の友好が深められれば幸いである。」と述べた。 この歓迎会には県教育委員会の関係者と訪問校の教頭、教師、生徒代表ならびに御殿場高校と浜松北高校に留学している中国留学生の張弘さんと劉賀さんも出席した。また、当財団からは村上理事長が出席し、静岡県での交流実現に協力された教育委員会、学校、PTA、特にホームスティに協力された78世帯の高校生のご家族などに対してお礼と感謝の気持ちを表明した。訪問校は県立静岡高等学校、静岡西高等学校、静岡東高等学校、静岡城北高等学校、清水西高等学校、清水東高等学校の6校である。
学校での交流はそれぞれの特色を発揮、県下のトップ校で進学校として全国に有名な静岡高校では、数学の授業に参加した中国高校生3人は先生が与えた関数の問題をいずれも黒板に見事に解いて先生から誉められていた。清水西高校の衛生看護科では介護のしかたを学習し、静岡東高校では元気な応援団のエールに、また清水東高校では茶道部が催すお茶会で、生徒による茶の点前を見、抹茶を味わい、それぞれ新鮮な印象をもった。これらは中国の高校にはない教科や文化の体験であった。 静岡西高校ではPTAの肝いりで賎機(しずはた)太鼓の演奏と全国大会でも活躍している少林寺拳法部による実演、演武、吹奏学部の歓迎演奏に応えて訪日団も竹笛、サックス、ピアノの演奏を披露して盛り上がった。また、女子校の城北高校では内蒙古自治区の生徒が民族衣裳を着用、城北高校の生徒も浴衣姿で交流し、華やかな雰囲気のなかで交流は和やかに行われた。
京都、奈良で歴史と伝統文化を体験 高校生交流を終えた一行は東京お台場を訪れ、みなと館、日本科学未来館などを参観、経済発展と科学技術の発展について学び、また関西では、京都で絞り染め体験、金閣寺、清水寺、嵐山の参観、奈良では東大寺、唐招提寺などを訪れて、山紫水明の古都の雰囲気を楽しみ、日本の伝統文化、大陸との交流の歴史、仏教文化などを学んだ。
帰国前夜はホテルニューオオタニ大阪で、孫建明大阪総領事館教育担当領事以下6名の領事と、大阪府教育委員会の和佐眞宏教育監以下7名の幹部が出席して一行の歓送会が行われた。当財団の王泰平中国代表理事が主催者を代表して会に臨み、交流が多くの成果を残して円満に終了したことを慶び、各界のご協力と関係者の努力に対して感謝と慰労の言葉を述べた。 (2004.5 日中歴史研究センター)